研究テーマ

本研究室では、地下をうまく利用することにより、環境問題や資源問題、防災対策などに貢献することを目指しています。 複雑で、ときに直接的な観測が難しい問題に取り組むため、理論、シミュレーション、室内実験、フィールド調査などの様々な手法を組み合わせて研究を行っています。

地下水揚水量の増減に伴う地盤沈下/隆起現象

地下水は安価で水質・水温も比較的安定した重要な水資源ですが、利用の際にネックとなることの一つとして、地盤沈下問題があります。 かつて日本でも四大公害の一つとして社会問題となりました。現在も地域によっては継続中であり、またアジア諸国の沿岸平野の大都市などでは、深刻な問題となっています。 適切な地下水利用の在り方について数値シミュレーション等の手法を用いて検討し、産業の発展に伴う水需要増加と環境配慮のバランスに関する意思決定に貢献することを目指しています。

光ファイバーセンサーによる岩盤の高精度ひずみ計測

岩盤の変形を監視することは、地下構造物や岩盤に基礎を置く建造物の施工および供用中の安全性・健全性の評価のためにきわめて重要です。 将来的には、地震防災などにも貢献するかもしれません。 現在、岩盤の変形を世界最高水準の超高精度(分解能10-8ε程度以上)で長期計測する技術の実証試験を行っており、数値解析や実験を通して観測データの評価等を行っています。

地中熱利用に関わる熱輸送−地下水流動−地盤変形連成現象

空調のヒートポンプの熱交換先を、一年中温度が安定している地下にすることで飛躍的に効率をよくする「地中熱利用」は、省エネ技術・ピークカット技術として期待されており、実際欧米ではかなり導入されています。 しかし、日本では全くといって良いほど、普及していません。これは、日本の地層や地下水流れの複雑さや、掘削費用などがリスク・コストとして忌避されているのが一因と考えられています。 また、熱交換効率の良い揚水・還元方式が、地盤沈下防止のための地下水揚水規制のために採用できない地域が多いということもあります。 これらのリスクやコストの低減、あるいは地盤変形や地下温度変化などの環境影響の可能性などについて、熱輸送−地下水流動−地盤変形連成現象のモデリング技術開発や、実験などを行っています。

干渉型合成開口レーダ・GPS・水準測量等による地盤変動観測データと地盤変動モデリングの融合

観測データは実際の記録ですが、観測にはそれぞれ手法に応じた誤差や測定範囲などの限界があります。 一方、数理モデルは理論的には正確ではありますが、想定していないプロセスは再現できませんし、パラメータの不確実性などもあり、こちらも正しいとは限りません。 このように、これら単独では、それぞれ限界がありますが、うまく融合してそれぞれの短所を補い長所を生かすことで、一番もっともらしい現在の状態を推定したり、将来予測の精度を向上したりできる可能性があります。 データ同化やインバージョン解析の発想を取り入れながら改良し、物理モデルや観測データを最大限活用する方法について研究しています。